「管理費がもったいない」と思ったら。
事業用物件の自主管理、どこまで自分でできるか
「管理費、もったいないんですよね。自分で管理していいですか?」
オーナー様から、よくいただくご相談です。
何も起きていない月でも管理費はかかります。毎月家賃の数%を払い続けるとなると、「これ、自分でできるんじゃないか」と思うのも当然です。
実際、事業用物件は自主管理できる部分が意外と多くあります。
特に、一棟のアパートやマンションと比べると、店舗や事務所などは共用部分やオーナー側で管理する設備が少ない物件も多く、自主管理しやすいケースがあります。
実際の手間は物件そのものよりも、入っているテナントさんによって大きく変わります。
ほとんど連絡のないテナントさんなら、「管理会社の必要はないな」と感じるかもしれません。一方で、連絡やトラブルが多いテナントさんだと、管理会社が間にいるありがたさを感じることがあるのも事実です。
ここで、管理会社がやっている仕事を一つずつ見てみましょう。
家賃の入金確認と督促
保証会社を利用し、家賃も自動引き落としになっている場合、オーナー様が入金確認をすることはほぼなくなります。
ここは、自主管理でもそれほど困らない部分です。
振込の場合は、毎月決まった日に入金を確認し、入っていなければテナントさんに連絡する必要があります。
ずっと振込であったテナントさんでも、可能であれば、保証会社の集金代行などを利用して自動引き落としにしておくと、入金確認の手間はかなり減らせます。
問題は、滞納が発生したときです。
メールですぐ返事をくださる方もいれば、電話でなければ連絡がつかない方、その電話でもなかなか連絡がつかない方もいます。
入金されていないのが、単に忘れている場合はいいのですが、そうでないことも多いです。
この「お金の督促」は、オーナー様自身がやるとなるとストレスになる仕事です。
家賃管理そのものは簡単でも、滞納が起きたときまで自分で対応できるか。それが重なってきた時にはどうするのか?
裁判や明け渡しも自分でできるか?
そこまで考えておくとよいと思います。
テナントさんからの連絡対応
これも、テナントさんによって本当に違います。
原因をある程度調べてから、
「ここが故障しているようです」
と連絡をくださる方もいれば、
「電気がつきません」
と連絡があり、確認してみたら電球が切れている、コンセントが入ってない、ということもあります。
水漏れ、電気、鍵、シャッター、エアコン、給排水。
何かあったときに、まず誰に連絡が来るのか。
自主管理なら、それはオーナー様です。
ご自身が物件の近くに住んでいれば対応しやすいですが、遠方に住んでいたり、本業があって日中すぐに動けなかったりする場合は、この部分が自主管理できるかどうかの一つの判断材料になります。
もちろん、すべて自分で現場へ行く必要はありません。行っても何もできないことも多いです。
電気なら電気屋さん、水道なら水道業者さんというように、お願いできる業者さんをあらかじめ何社か持っておけば、自主管理でもかなり対応しやすくなります。
退去時の原状回復
事業用物件の場合、住宅とは契約内容や内装の考え方が違うため、まず賃貸借契約書で「どこまで戻して退去するのか」を明確にしておくことが大切です。
そして、入居時の状態を写真で残しておきます。
退去時には契約内容と入居時の記録を見ながら確認していきます。
特に気をつけたいのが、入居中に、
「この造作は残していいですよ」
「これは元に戻さなくても大丈夫です」
といった話をした場合です。
口頭だけで済ませず、その時点でメールや書面に残しておくことをおすすめします。
何年も経つと、言った側も言われた側も記憶が曖昧になります。
これは管理会社がいる、いないにかかわらず、後のトラブルを防ぐために大事なことです。
空室が出たときの募集
ここは、自主管理とは少し分けて考えてもいいと思います。
最近はオーナー様自身が物件情報を掲載できるサービスもありますが、事業用物件の募集は、不動産会社に募集だけ依頼することもできます。
「自主管理するなら、募集も契約も全部自分でやらなければならない」
ということではありません。
普段の管理は自分で行い、空室になったときだけ不動産会社に募集を頼む。
これは普通にできます。
事業用物件は、業種によって使える物件・使えない物件がありますし、内見の日程調整や条件交渉、契約手続きなどもあります。
そのため、日常管理は自分でできても、募集については不動産会社を使ったほうが負担が少ない、と考えるオーナー様も多くいらっしゃいます。
契約の更新
契約内容によっては、自動更新という方法もあります。
ただ、何年か経つと、法人の所在地や代表者、連絡先などが変わっていることもあります。
必要な時に、移転していて連絡がつきにくいこともありますし、保証会社への変更の届出ができていないと問題になったりもします。
そのため、何年かに一度、更新のタイミングで現在の情報を確認する機会をつくっておくのも一つの方法です。
更新手続きをオーナー様ご自身で行うのであれば、テナントさんへ連絡し、必要な書類を作成して送り、署名・押印して返送してもらい、必要に応じて更新料などの入金を確認することになります。
この作業が苦にならなければ、ご自身で行うこともできます。
反対に、
「普段の管理は自分でやるけれど、更新のときだけお願いしたい」
という方法もあります。
管理というのは、必ずしも「全部頼む」か「全部自分でやる」かの二択ではありません。
募集だけ。
更新だけ。
契約書の作成だけ。
必要なところだけ不動産会社に頼む、という考え方もあります。
また、中には、
「長く入ってくれているだけでありがたい」
という考えで、更新料を取らず、家賃も長く据え置いて、自動更新されているオーナー様もいらっしゃいます。
どれが正解というより、その物件をどう持っていきたいかによって考え方は変わります。
建物まわりの清掃・植栽・ゴミ置き場
アパートやマンションでは、共用廊下や階段、ゴミ置き場、植栽などの管理があります。
こうした作業は、管理会社を通さず清掃会社や植木屋さんなどに直接定期依頼することもできます。
一方、店舗や事務所、店舗兼住宅などでは、契約内容や物件の形態によってはテナントさんが日常的な清掃や管理をしているケースもあり、共同住宅ほどオーナー側の日常管理が発生しない物件もあります。
自分の物件では、
「オーナーが管理する場所はどこか」
「テナントさんが管理する場所はどこか」
を一度書き出してみると、自主管理した場合の仕事量が見えてきます。
住宅と事業用では、管理の中身が違う
住宅の場合、共用灯、廊下、階段、ゴミ置き場など、オーナー側で管理する場所や設備が比較的多くあります。
電球が切れた。
ゴミ置き場が汚れている。
共用部分に私物が置かれている。
一つひとつは小さなことでも、戸数が増えると対応することも増えていきます。
一方、店舗や事務所などの事業用物件では、テナント側が設置・管理する設備もあり、住宅ほど日常的な対応が発生しない物件もあります。
ただし、これは契約内容によります。
エアコン、給湯器、シャッター、看板、電気設備など、「壊れたときに誰が直すのか」は、最初に確認しておいたほうがいいところです。
また、以前、高級賃貸を扱っていたことがありますが、高級な物件になるほど、建物の状態やサービスに対して入居者から求められる水準も高くなる傾向があります。
同じ「賃貸物件」でも、物件によって管理に必要な手間はまったく違います。
自主管理できるかは、「何もない月」ではなく「何かあった日」で考える
自主管理を検討しているオーナー様に、一番お伝えしたいのはここかもしれません。
何もない月だけを見ると、自主管理は簡単です。
家賃が入っていることを確認して終わり。
それなら、
「毎月管理費を払わなくてもいいのでは?」
と思うのも当然です。
でも、自主管理できるかどうかを考えるなら、「何もない月」ではなく「何かあった日」を想像してみたほうが分かりやすいと思います。
家賃が入っていない。
水漏れした。
シャッターが開かない。
テナントさんと連絡がつかない。
退去すると突然言われた。
そういう連絡が、本業で忙しい日の午前中に入ってきたとき、自分で対応できるか。
すぐ現場へ行けなくても、業者を手配したり、電話やメールで状況を整理したりできるか。
そこが大丈夫なら、自主管理という選択肢は十分あると思います。
管理費には、数字に出にくいものもある
最後に、管理費の中身として見えにくいものをひとつ。
トラブルの連絡を受けると、
「早くなんとかしなくちゃ」
と気持ちが焦ります。
管理会社の人間でもそうです。
ご自分の持ち物であるオーナー様なら、なおさら気になると思います。
管理会社が間に入る意味は、単に電話を受けたり業者を手配したりすることだけではありません。
オーナー様とテナントさんの間に誰かが入り、ワンクッション置く。
そのこと自体が、精神的な負担を減らしている場合もあります。
ですから、自主管理にするかどうかは、単純に、
「年間の管理費がいくら浮くか」
だけではなかなか決められない部分もあります。
自分でできることは自分でする。
面倒なところだけ人に頼む。
全部任せる。
どれでも構いません。
まず、
「自分の物件では何の管理が必要なのか」
「その中で、自分がやりたくないことは何なのか」
を分けてみる。
そのうえで管理費と比べてみると、自分に合った管理の形が見えてくると思います。
弊社でも、事業用物件の募集だけ、更新だけなど、管理業務の一部だけをご依頼いただいているオーナー様も多くいらっしゃいます。